研究概要 |
純Tiを5M H_2O_2/0.1M HNO_3水溶液に浸漬し,表面にTiO_2ゲル膜を合成した後,100mM ZrOCl_2/5M NH_3/x mM C_6H_8O_7水溶液中で180℃-12hの水熱処理を施した。C_6H_8O_7無添加の場合(x=0),表面のゲル膜が結晶化し,アナターゼ型TiO_2膜が得られた。一方,C_6H_8O_7を添加した場合,Ti表面にはTiO_2-ZrO_2膜が合成された。C_6H_8O_7のカルボキシル基がZrと配位結合することで水熱処理中に析出したZr(OH)_4ゾルの表面が活性化され,TiO_2との結合が促進されたためと推察している。また,x=400の時,ZrO_2の体積率が最大となった。これは過剰なC_6H_8O_7の添加がTiO_2の溶解・再析出を鈍化させたことを示唆している。得られたTiO_2-ZrO_2膜(x=400)を擬似体液に浸漬すると10日後よりハイドロキシアパタイトの析出が明瞭に観察された。未処理の純Ti上では同等の析出が6日後より観察されたことから,この表面修飾によりハイドロキシアパタイトの析出が抑制されたと言える。また,同様の表面形態を有するTiO_2膜上では浸漬2日で多量のハイドロキシアパタイトの析出が観察されたことから,少量のZrO_2がその析出の抑制へ効果的に寄与したと言える。TiO_2-ZrO_2膜(x=400)試料をラット脛骨に2週間埋植したところ,皮質骨-インプラント接触率は24%であり,NH_3水溶液中で水熱処理を施し得られたTiO_2試料に比べ骨伝導が抑制された。
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