研究概要 |
H22年度に確立したTiO_2-ZrO_2膜の合成法を改良すると共にラットから摘出した骨/インプラント界面を観察することを目的とした。 1.TiO_2-ZrO_2膜合成の最適化 純TiにH_2O_2/HNO_3溶液を用いた化学処理を施した後,ZrOCl_2/NH_3水溶液にカルボキシル基数の異なるヒドロキシ脂肪酸(乳酸[1],酒石酸[2],クエン酸[3],[1分子中のカルボキシル基数])を添加し,180℃-12hの水熱処理を施した。いずれのヒドロキシ脂肪酸においても,ある添加量でTiO_2中に含有されるZrO_2の体積率が極大を示した。水熱処理中に生成するZrO_2ゾルをTiO_2に結合させるには,ヒドロキシ脂肪酸の添加が必要であるが,過剰に添加すると処理溶液のpHが低下するため,TiO_2の溶解・再析出が抑制され,結果としてZrO_2の体積率が減少すると推察している。100mM ZrOCl_2/5 M NH_3水溶液にクエン酸を400-1200mM添加した場合,ZrO_2含有率の高い酸化物膜が得られた。 2.生体骨/インプラント界面の電子顕微鏡観察 純TiにTiO_2膜,TiO_2-ZrO_2膜を成膜した試料をラットに2weeks埋入した。TiO_2膜では非常に高い骨/インプラント接触率を示したのに対し,TiO_2-ZrO_2膜では主成分がTiO_2であるにもかかわらず,接触率は顕著に低い値を示した。透過型電子顕微鏡用薄片試料は収束イオンビーム加工装置で作製した。減圧雰囲気下で作製するため,骨が収縮し,インプラント界面に大きな力が発生する。TiO_2試料では,生体骨との結合が維持された。界面が破壊された試料もあったが界面観察の結果,その破壊はTiO_2/Ti界面で生じていることがわかった。一方,TiO_2-ZrO_2試料では常にTiO_2-ZrO_2/骨界面で破壊が生じ,界面強度が非常に弱いことが示唆された。
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