本研究は、タービンブレード材料の損傷過程における結晶方位の回転および歪みを調査する事で損傷個所と損傷状況が判別可能となる測定技術の知見を得ることを目的としている。 平成23年度は以下の研究内容を実施した。 タービン母材であるNi基単結晶超合金の高温下クリープ変形中のその場観測を白色中性子回折によって行い、材料の損傷過程における結晶方位変化および格子ミスフィットについて応力軸とその垂直軸の材料内分布を調査した。格子ミスフィットはラフト構造の形成と崩壊の起こる1次クリープ、3次クリープ域で顕著な緩和があり、特に母相であるγ相の格子定数の大きな差で応力軸とその垂直軸に異方性が見られることが明らかになった。クリープ変形後のニッケル基合金について中性子回折で結晶方位と格子ミスフィットの材料内分布を同時に測定したところ、すべり変形の蓄積の結果として起こる局所的な結晶方位変化のある部位で格子ミスフィットに増減があり、両測定を行うことで材料内の変形部位と変形量を評価可能であることを示した。クリープ試験中断材についてEBSD解析を行った。ラフト構造が崩壊し粗粒化した後の材料組織サイズでも1μm程度であるために鮮明な方位解析結果は得られなかったが、結晶方位の材料内分布は中性子回折で得られた結果と同様であり、これまでの測定結果の妥当性を示した。物質への透過能の良い中性子回折法を用いることで、タービン翼の損傷部位を非破壊で評価できる事を示した。
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