化学気相析出(CVD:Chemical Vapor Deposition)法は、気相からの析出反応により基材をコーティングする方法であり、合成温度や炉内圧力を変化させることで、原子レベルでの多様な構造制御が可能である。その被覆性が高いことから、実用コーティング法として幅広く使用される。本研究代表者らは、高強度の連続発振レーザービームをレンズで拡げて原料ガスおよび基板へ照射するCVD法を発案し、この活性な反応場を利用して、セラミックス基材上に結晶配向性の高いセラミックス膜を低温で合成できることを明らかにしてきたが、本手法を用いることで、従来のCVD法では難しかった金属基材への硬質セラミックスコーティング技術の開発へと研究の展開が可能である。 半導体レーザーを用いたレーザーCVD法により、アルミニウムアセチルアセトナート原料を用いてAlNおよびサーメット基板上にα-Al_2O_3膜を合成した。密着強度評価装置を用いて、TiCN基材上に成膜したα-Al_2O_3膜の密着強度を評価した、これにより、レーザー出力、成膜温度、成膜雰囲気、炉内圧力および原料供給温度などの成膜条件が、コーティング膜の微細構造と密着性に及ぼす影響を明らかにし、TiCN基材上に成膜したα-Al_2O_3膜において、良好な密着性を示すコーティング膜を合成した。一方、半導体レーザーを用いたレーザーCVD法により、チタンテトライソプロポキサイド原料を用いてTiNおよびTiON膜を合成に成功した。
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