研究概要 |
本研究では,次世代透明導電膜(IZO:Indium-Zinc-Oxide)作製スパッタリングプロセスにおける気相・薄膜表面反応過程の解析を目的とした. マイクロホローカソード放電を用いた多元素同時モニタリング光源を用いた吸収分光法によりIZOスパッタプラズマ中のIn及びZn原子密度を同時測定し,気相の解析を行った.狭帯域レーザを用いた吸収分光法によりスパッタリングプラズマ及び多元素同時モニタリング光源中の原子の並進温度とプロファイルの解析を行った.気相診断と作製した薄膜の膜質評価の結果と比較して,透明導電膜製膜メカニズムの解明を行った. スパッタリングプラズマ中のスパッタ金属原子の挙動を解明するために,狭帯域レーザ吸収分光法を用いて鉛原子(鉛ターゲット)の並進温度とプロファイルの測定を行った.RF電力30W,圧力5Paでは並進温度550Kのドップラープロファイルであることが判明した. 本光源を用いた吸収分光法によりIZOスパッタプラズマ中のIn及びZn原子密度の同時測定を行った結果,IZO膜生成条件でのそれぞれの密度は10^9-10^<10>cm^<-3>オーダーであることが判明した.気相中のInとZn原子の相対密度比は,低圧ほどZnの比が大きくなることがわかった.この結果は,XPSを用いた膜中の組成比と振る舞いが一致した.圧力が減少するにつれIZO膜のキャリヤ密度と移動度は増加し,抵抗率は減少した.XPSによるIn(3d),Zn(2p),O(1s)を測定したところ,InとZnのスペクトルは変化がなかったが,Oからは酸素欠損に寄与するピークが見られ,導出された酸素欠損量は圧力が減少するにつれて増加した.これは,膜中のZn濃度が増加したためであることが示唆された. 膜の透過特性を測定したところ,紫外の吸収端が圧力が減少するにつれて短波長側にシフトすることが分かった.キャリヤ密度の振る舞いから,Moss-Burstein theoryによるものであることが示唆された.
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