研究概要 |
本研究は,肥料を高付加価値化させる技術の開発を目指して,噴霧乾燥法により化学的に安定なリン酸カルシウムで可溶性物質を包含した組成傾斜粉体の合成を目的としている.研究結果を以下に示す. 1.噴霧乾燥法による組成傾斜粉体の作製 二酸化炭素を吹き込み調製した高濃度水酸アパタイト(HAp)水溶液に硝酸カリウムを添加することで,当初の計画通りに外壁にHAp,内部に硝酸カリウムが析出した組成傾斜粉体を作製することができた. 2.各種イオンの放出特性の検討 イオンクロマトグラフィーおよび電気伝導度を用いて充填物の放出特性について検討を行ったところ,組成傾斜粉体による内部成分の徐放特性を有することが確認できたが,徐放期間は短時間であった.この理由は組成傾斜粒子の機械的強度が低く,水中で崩壊したためであると考えられる. 3.トマトの栽培実験 作製した組成傾斜粉体を用いてトマトの栽培実験を行ったが,組成傾斜粉体を用いた優位性は見出せなかった.これは,粒子の機械的強度が低いために土壌中で崩壊し,短期間で肥効成分を放出してしまったためであると考えられる. 4.組成傾斜粒子の徐放特性の制御 これまでの研究により,徐放特性を向上させるためにはHAp外壁を厚くすることが有効といえる.そこで,HApの替わりに溶解度の高いCa_3(PO_4)_2を用いて壁厚の厚いリン酸カルシウム中空粒子を作製した.この結果,粒子1粒の圧縮強さはHApでは0.6MPa程度であったものが,Ca_3(PO_4)_2から作製した中空粒子では約12MPaへ向上しており,この粒子内部に硝酸カリウムを析出させることで機能性肥料が作製できるのではないかと考えられる.
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