研究概要 |
基材に純Mgを用い、処理溶液のCa源濃度を50mMから250mMに増加したところ、水酸アパタイト(HAp)被膜形成が促進され、均質な被膜が得られる処理時間を短縮できた。処理溶液の温度上昇によってもHAp被膜形成を促進することができた。また、処理溶液のpHが及ぼす影響を検討したところ、pH5.9ではリン酸八カルシウム(OCP)が、pH8.9および11.9ではHApを主成分とする均質な被膜が得られた。走査電子顕微鏡(SEM)による断面構造解析より、OCPおよびHApのいずれの被膜も、2~3μmの緻密な内層と、内層から成長した板状もしくは棒状結晶からなる5μm程の外層で構成されていることが明らかとなった。ここで、GD-OESによりpH5.9および8.9で作製した被膜成分を分析したところ、OCPやHApを構成するCa,P,O,Hに加えてMgやNaなどのカチオンが混在していることがわかった。透過型電子顕微鏡(TEM)-電子線回折では、被膜の内層および外層ともOCPもしくはHApによる回折パターンのみを示したことから、MgやNaなどのカチオンは、OCPやHAp構造に取り込まれている以外は、リン酸塩などのアモルファス状態で混在していると考えられる。 OCP被覆およびHAp被覆純Mgの3.5Wt% NaCl溶液中でのアノード分極試験より、リン酸カルシウム被覆により純Mgの耐食性が大幅に改善されること、およびHAp被膜の方がOCP被膜よりも高い保護性を示すことが明らかとなった。
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