研究課題/領域番号 |
22760568
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
廣本 祥子 独立行政法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, MANA研究者 (00343880)
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キーワード | マグネシウム / リン酸カルシウム / 水酸アパタイト / リン酸八カルシウム / Ca錯体 / 水溶液(化成)処理 / 浸漬試験 / 生体材料 |
研究概要 |
基材にAZ31マグネシウム合金(Al 3mass%,Zn 1mass%,Mg Bal.)を用い、昨年度までの純Mgと同様のpH5.9および8.9のCa-EDTA水溶液で処理を行ったところ、純Mgでの場合と同様に、pH5.9でリン酸八カルシウム(OCP)を主成分とする被膜が、pH8.9で水酸アパタイト(HAp)を主成分とする被膜が得られた。被膜が比較的緻密な内層と板状OCPもしくは棒状HAp結晶から成る外層で構成されている点は、AZ31と純Mgで共通であった。詳細な構造には基材の種類による違いが現れ、純Mgでは比較的平坦な内層から垂直方向に棒状HAp結晶が伸びていたのに対し、AZ31の内層はドーム状結晶が緻密に集合して層を成しており、各ドーム状結晶から棒状HAp結晶が放射状に伸びていた。 細胞培養液中に、HAp被覆および非被覆のAZ31および純Mgを1週間浸漬したところ、HAp被覆によりMgイオン溶出量がそれぞれ1/2および1/5程度に減少した。HAp被覆AZ31とHAp被覆純MgからのMgイオン溶出量は同等であり、HAp被膜がMgイオンの溶出を規制しており、被膜の保護性に及ぼす基材マグネシウムの種類の影響は小さいことがわかった。SEM観察では細胞培養液からのリン酸カルシウムの析出はみられず、1週間の浸漬で棒状HAp結晶の形状はほとんど変化していなかった。一方、XRD測定により少量のMg(OH)_2析出がみられたことから、基材の(劣化)腐食は被膜の欠陥部もしくは被膜と基材の境界で起こっていることが示唆された。HAp被覆マグネシウムの劣化挙動の詳細については平成24年度に検討する予定である。 出発原料のCa錯体の種類を従来のCa-EDTAから乳酸Caなどに代えて純Mgの水溶液処理を行った。OCP被膜の形成はみられたが、用いたpH範囲ではHAp被膜の形成はみられなかった。Ca錯体の種類によって形成されるリン酸カルシウムの種類が異なることが示唆されたが、詳細については今後の検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
基材とするマグネシウム合金の種類ごとに水酸アパタイト(HAp)の形成条件や被膜形態が異なるため、基材ごとのHAp被膜作製に関する検討を優先させていたところ、被膜の強度や密着性などの機械的性質・安定性の検討が遅れてしまっている。一方、計画書にはないが、HAp被膜の化学的安定性の検討ため、酸性溶液中浸漬試験を追加で行っている。また、H24年度に予定している長期間の腐食試験によるHAp被覆材の劣化挙動に関する検討はすでに始めている。以上より、総合的には(3)であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となるH24年度には、長期の腐食試験を行ったHAp被覆AZ31および純Mgの被膜および下地の腐食(劣化)形態をXRD測定やSEM観察などにより詳細に分析することで、HAp被覆マグネシウムの基材消失過程を検討する。ここで、進捗が遅れている被膜の機械的性質の検討については、疑似体液中浸漬後の被膜のクロスカット試験を行うことで、HAp被膜の密着性について検討する。
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