水酸アパタイト(HAp)およびリン酸八カルシウム(OCP)を被覆したAZ31(Mg-3mass%Al-1mass%Zn)合金および化学研磨ままのAZ31を細胞培養液に1年間浸漬し、培養液中のMgイオン濃度の変化および浸漬後の基材の腐食形態を検討した。HApおよびOCP被覆によりAZ31からのMgイオン溶出の開始は数日間遅延され、溶出開始後のMgイオン溶出速度は化学研磨まま材よりも抑制された。また、HAp被覆材の方がOCP被覆材よりも低い溶出速度を示した。これらの結果より、HApおよびOCP被覆は長期間にわたってMg合金の腐食を抑制できること、および被膜のリン酸カルシウムの種類により腐食速度を制御できることが明らかとなった。 一方、培養液浸漬1週間目のHAp被覆材の基材AZ31には局部腐食が発生していた。局部腐食の面積および深さとも浸漬時間の増加に伴い増加した。これより、リン酸カルシウム被覆材においては、局部腐食発生の抑制もしくは遅延が必要であることが今後の課題として示唆された。 HAp被覆AZ31の引張り試験を大気中で行い、任意の伸びまで引っ張った後に除荷した試験片表面の電子顕微鏡観察を行った。伸び5%を加えて除荷した表面では、HAp被膜にき裂や剥離はみられなかった。伸び12%を加えた表面では、HAp被膜に荷重方向に直角にき裂が生じ、被膜の一部が剥離した。剥離面の組成分析より、剥離はHAp被膜の内層の破壊により生じたと考えられる。荷重付与下での伸び5%は1.5%の残留歪みを与えることから、HAp被膜は基材の静的な歪みに対して良好な密着性を示すことが明らかとなった。
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