研究概要 |
本研究は,最近注目されはじめた金属粉末の積層造形法に着目し,レーザ照射により粉末を瞬時に溶融急冷凝固しながら形状を付与できる特長を活かして,これまで大型化および二次加工が難しいとされている金属ガラス材料に対して,金属ガラスを創製しながら同時に大型で複雑な形状をも付与できる新しい造形技術を確立することを目的とする.平成22年度は,Zr基金属ガラス材料(Zr-Al-Ni-Cu)の構成元素の素粉末混合体を供試材として,2次元平板を対象に,種々のレーザ照射条件で得られた平板の構造解析を行い,微結晶相の存在しない金属ガラス体の作製が可能な造形条件を探索した.レーザ照射条件は,出力および走査ピッチを一定にして,走査速度を変化させた.平板のX線回折測定の結果,各素粉末のピークは消滅し,微結晶相のピークと非晶質に特有のハローパターンが認められた.レーザの走査速度が増加するにつれて,微結晶相のピーク強度は減少した.また,示差走査熱量計による熱分析の結果,ガラス転移温度と結晶化開始温度が認められ,これらはいずれも同組成の金属ガラス粉末の測定値とほぼ一致していた.以上の結果から,微結晶相は残存するものの,平板内に金属ガラス相が生成していることを確認した.さらに,装置の機構を改良し,冷却能を向上させて同実験を行ったところ,微結晶相の体積割合は一層低減できることが分かった.以上の検討から,2次元平板の造形で金属ガラスを創製しやすい条件を見出した.
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