研究概要 |
本研究は,最近注目されはじめた金属粉末の積層造形法に着目し,レーザ照射により粉末を瞬時に溶融急冷凝固しながら形状を付与できる特長を活かして,これまで大型化および二次加工が難しいとされている金属ガラス材料に対して,金属ガラスを創製しながら同時に大型で複雑な形状をも付与できる新しい造形技術を確立することを目的とする.平成24年度は,これまでのZrAlNiCu系金属ガラス組成の素粉末混合体を対象材とした造形実験結果と比較するため,あらかじめZrAlNiCu系金属ガラス単体粉末を作製し,それを対象材として種々の造形条件にて3次元形状の積層造形実験を行った.その結果,レーザ走査速度の増加につれて結晶相の析出は抑制できるが,完全には結晶化を避けられず,しかも緻密体は得られなかった.一方,緻密体が得られるようなレーザ走査速度の遅い条件では,結晶相が多く析出した. そこで造形中の結晶化を回避するために,TTT曲線においてノーズ時間の長い系であるZrBeTiNiCu系を第2の候補材料として選択した.Zr,Be,Ti,Ni,Cuの各素粉末をボールミルにて混合し,ベースプレート上に積層厚さ1層分の厚さで敷き詰めた粉末層に対して種々の条件にてレーザを走査させて2次元平板を作製した.X線回折測定の結果,各素粉末および化合物などの明確な結晶相のピークはほとんど認められず,非晶質に特有のハローパターンのみが認められた.このように,積層造形法により金属ガラスが得られやすい組成と造形条件を見出せたので,今後,大型複雑形状の金属ガラスが造形可能になる.
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