3DXRD顕微鏡法は金属材料内部の各結晶粒の結晶方位と応力を3次元非破壊で観察することを可能にした新しい手法で、金属材料強度・成形予測の産業利用実用化へ向けた多結晶塑性モデル評価等に有用であると期待されている。3DXRD法の代表的な測定方法では迅速測定のため、粒径より大きな幅の放射光X線ビームを用いて試料1軸回転し、試料断面における複数の結晶粒を一度に再構成する。そのため結晶粒数上限の問題から取り扱える試料が粗大粒材、もしくは力学特性に影響を及ぼす程に試料外径を小さくしなければならないことが懸念される。 そこで本研究では、実用金属材料を観察する上で上記の問題を解決する方法として、粒径より小さな幅の入射ビームを使って試料を走査する走査型3DXRD法を提案し、その原理検証実験を行った。検証用試料として平均粒径60μmに粗大化させたフェライト多結晶、入射ビームとして水平・垂直方向スリット20×20μmを通した放射光X線ビームを使って (1)試料回転中心軸上にある結晶粒を特定する原理を実証した。次に (2)試料回転中心軸上にない点においてその点を占める結晶粒を特定する原理を実証した。これにより2次元結晶方位マッピング、またそれらを積み重ねることにより3次元結晶方位マッピング(ボクセル分解能25μm、視野φ225×175μm)を得ることに成功した。 最初の応用として (3)塑性変形その場観察実験を行い、単軸引張変形荷重(歪4%)負荷下における3次元結晶方位及び弾性歪マッピングを得た。これによりBCC多結晶すべり変形を非破壊で観察することに成功した。
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