鉄スクラップにはトランプエレメントと称される不純物成分(Cu等)が含まれ、我が国製鉄業が得意とする高級鋼材の原料としての使用が制約されている。近年、海外に依存する鉄鋼原料である鉄鉱石、石炭等が海外資源メジャーの寡占下で急騰しており、これら資源の乏しい我が国にとって、国内に蓄積されている鉄スクラップ資源を看過すべきではない。トランプエレメントを除去する技術は必要不可欠であり、様々な技術が開発されてきたが実用化には至っていないのが現状である。本研究ではFe-Cu-C系におけるCu含有γ-Feの凝固偏析を利用してCuを除去する凝固精製法での脱銅技術の確立を目指している。本年度はFe-2mass%Cu合金にCを4.2mass%添加したFe-Cu-C系融体の一方向凝固実験を実施した。凝固後の試料において、初期凝固部では主にデンドライト組織が存在し、そのデンドライトが凝固の進行とともに減少していることが確認できた。また、元素分析による結果から、初期凝固部でのデンドライト組織はCuを含むγ-Fe相であり、初期のCu濃度(2mass%)よりもCu濃度が高かった。試料全体を通して凝固初期部2.5mass%、凝固後期部1.5mss%のCu濃度差を得ることができた。一方、温度勾配の無い凝固試料では、γ-Fe相のデンドライトが一様に存在しており、試料全体で初期Cu濃度である2mass%から変化はしていなかった。以上のように、凝固精製法による脱Cuの可能性を見出せた。
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