鉄スクラップにはトランプエレメントと称される不純物成分(Cu等)が含まれ、我が国製鉄業が得意とする高級鋼材の原料としての使用が制約されている。近年、海外に依存する鉄鋼原料である鉄鉱石、石炭等が海外資源メジャーの寡占下で急騰しており、これら資源の乏しい我が国にとって、国内に蓄積されている鉄スクラップ資源を看過すべきではない。トランプエレメントを除去する技術は必要不可欠であり、様々な技術が開発されてきたが実用化には至っていないのが現状である。本研究ではFe-Cu-C系におけるCu含有γ-Feの凝固偏析を利用してCuを除去する凝固精製法での脱銅技術の確立を目指している。昨年度はFe-C-Cu系融体の一方向凝固実験を実施し、凝固後にCuの濃度分布を確認した。本年度は、昨年度の結果を踏まえ(1)Cuの凝固偏析におよぼす凝固速度の影響、および、(2)Cuの凝固偏析におよぼす初期に含まれるCu濃度の影響について調査した。(1)凝固速度を変化させた実験結果から、凝固速度を小さくすることにより平衡状態図に従って凝固がおこることから、Cuの偏析の程度が大きくなることが分かった。(2)系中に含まれるCu濃度が0.1~2.0mass%の範囲では、Cuの凝固偏析が生じることを確認した。この結果に基づく解析から、凝固中の固相/液相間のCuの偏析係数は、濃度に依存せずおよそ1.2であることを明らかにした。また、初期のCu濃度0.1mass%に本技術を適用した場合、鋼材に影響のないCu濃度である0.1mass%未満を満足する部分が、試料中の30%を占めることが明らかとなった。以上より、凝固精製法による脱Cuの可能性を見出すことができた。
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