研究課題/領域番号 |
22760584
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研究機関 | 旭川工業高等専門学校 |
研究代表者 |
高田 知哉 旭川工業高等専門学校, 物質化学工学科, 准教授 (00342444)
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キーワード | グラフト技術 / 放射線 / 紫外線 / 異性化反応 |
研究概要 |
平成23年度には、放射線グラフト重合に対する紫外線照射の効果についての知見を得るため、ポリプロピレンを基材とした放射線グラフト重合におけるグラフト率を、放射線のみの照射の場合と放射線/紫外線の逐次的複合照射の場合で比較した。具体的な操作は、下記の通りである。 (1)シンジオタクチックポリプロピレンを所定量ガラス管に入れて窒素置換したのち密封し、室温(20℃)にてガンマ線照射(コバルト60線源を使用、線量3.0kGy)を行った。 (2)ガンマ線照射した試料のうちの1つに、更に波長253.7nmの紫外線を所定時間照射(低圧水銀灯を使用)した。 (3)ガンマ線のみ照射した試料とガンマ線と紫外線を照射した試料のそれぞれに、モノマーであるメタクリル酸グリシジルのメタノール溶液(濃度:10v/v%)を所定量加えて浸漬し、室温にて反応させた。 (4)反応後に容器からモノマー溶液を取り出し、メタノールにて試料を洗浄したのち乾燥させ、質量を測定した。 反応前の基材の質量を基準とする、グラフト鎖の質量(反応前後での試料の質量差に相当する)の割合をグラフト率と定義し、紫外線照射の有無でグラフト率が異なるかどうかを調べた。その結果、紫外線を照射した場合のほうがグラフト率が高くなる(これまでの実験条件ではおよそ1.5倍)ことがわかった。 従って、放射線/紫外線の複合照射は放射線グラフト重合の効率向上に対して有効であるといえる。ただし、この効果がポリマーラジカルの光反応による構造変化に起因するものなのか、それとも紫外線によるラジカル数そのものの増加によるものなのかは現時点では詳細に検討していないため、この点について更に詳しく調べる必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現時点までに放射線/紫外線の複合照射によるグラフト率の差異についてある程度のデータを得たが、その効果を説明するメカニズムを完全に明らかにするまでには至っていない。また、現状ではガンマ線の照射線量が小さく、低いグラフト率での比較となっているので、より大線量での照射を行い、グラフト率を高めた上で紫外線照射効果を比較する必要があると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
上記11.に記載の通り、大照射線量・高グラフト率の条件下で紫外線照射効果を更に詳しく検討する。また、グラフト鎖を官能基修飾し、水中の溶存イオン捕集に利用する実験も行う。対象とする溶存イオンはCd2+イオンを予定しており、濃度測定のための装置を平成23年度のうちに調達している。その結果から、グラフト鎖の高密度化とイオン捕集効率の間に関連があるかどうかを確かめる。科学研究費による助成の最終年度となるため、一連の成果を総括し、公表する(学会講演、学術論文など)。
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