本研究課題では、ポリプロピレンに代表されるアルキル側鎖を有するポリマーへの放射線グラフト重合に関して、グラフト鎖の高密度化をはかる目的で、紫外線照射を併用する方法について検討した。具体的には、ポリマーへの放射線照射による主生成物である2級・3級アルキルラジカルを開始点とするグラフト重合における立体障害を避けるために、紫外線照射による2級・3級アルキルラジカルの1級ラジカルへの異性化反応を利用して開始点の構造を変えた上で反応させることを考えた。 基材となるポリマーにはポリプロピレンを用い、グラフトモノマーとしてメタクリル酸グリシジルを用いた。ポリプロピレンを試料管中に入れて窒素置換したのち、北海道大学に設置されているX線照射装置により室温にて白色X線を照射した。その後、メタクリル酸グリシジルのメタノール溶液を所定量加え、グラフト重合を行った。同様の操作を、X線照射後に波長254nmの紫外線を照射した試料についても行い、紫外線照射の有無によるグラフト生成量の違いを調べた。グラフト生成量は試料の重量変化に基づいて測定し、グラフト率(基材のポリマーの重量と生成したグラフト重量の比)を算出し比較した。 実験結果の一例として、ポリプロピレン0.3g(照射X線量:約0.6kGy)に対してメタクリル酸グリシジルのメタノール溶液(10vol%)を加えた場合のグラフト率として、紫外線照射を行わなかった場合では約0.2%、紫外線照射そした場合では約0.5%となり、紫外線照射によるグラフト率の上昇がみられた。このことは、高密度なグラフト生成に対して紫外線照射が有効であることを示唆する結果である。ただし、現状では低いグラフト率での比較となっていることから、実験条件については今一度の検討を要する。
|