本研究では、頻発するプラント事故の主要因であるオペレータの異常診断過程におけるヒューマンエラー発生メカニズムを、オペレータの認知情報処理プロセス(情報獲得、情報解析、意思決定、行為実行)のレベルで詳しく解明することを目的に、不適切なアラームシステムがオペレータの異常診断にどのような影響を与え、結果として診断ミスにどのようにつながるのか、そのメカニズムを認知情報処理のレベルで詳しく解析した。 まず、プラント異常発生後のオペレータの異常診断過程を認知情報処理のレベル(情報獲得、情報解析、意思決定、行為実行)で詳細に模擬することのできるシミュレーション環境を構築した。つぎに、プラントで想定される数十種類の異常が発生したときの異常診断シミュレーションにより、異常診断過程データを収集した。収集データには、異常診断終了までの時間、情報の収集過程、異常診断ミスの発生率、アラーム発生数、発生アラーム種類である。対応操作の不要な迷惑アラームや短時間に多数のアラームが発生するアラームの洪水と異常診断ミスとの相関関係を調べた。さらに、異常診断シミュレーションの結果から、迷惑アラームやアラームの洪水がどのようにオペレータの異常診断ミスを引き起こし、結果としてプラント事故につながるのか、そのメカニズムを認知情報処理のレベルで詳細に解析した。異常診断ミスを起こした迷惑アラームやアラームの洪水の直接的な原因となったアラームシステムの不備を検出する方法を提案した。
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