研究概要 |
本年度は、細孔を拡大したメソポーラス材料を使用して、固定化したラッカーゼによる酵素反応を行った。これまで酵素固定化の対象としたメソポーラス材料(SBA-16)は8nm以下の細孔径を持つため、細孔径より大きな酵素が固定化に利用できないという問題があった。そこで、10nm以上の細孔径を持つメソポーラス材料の作製を行った。鋳型剤としてポリスチレン-ポリビニルピリジンのブロックコポリマーを用いて、メソポーラスシリカを作製した。電子顕微鏡観察により、作製したメソポーラスシリカは、約19nmの細孔径を持ち、3次元的に繋がったキュービック構造を取ることが分かった。 作製したメソポーラスシリカに固定化する酵素としてラッカーゼを選択した。ラッカーゼの等電点は約4であり、シリカの表面電荷の等電点は約2.3であるため、pH4以上の水溶液中ではラッカーゼとシリカは静電的に反発する。そのため、メソポーラスシリカ表面を3一アミノプロピルトリエトキシシランで修飾し、グルタルアルデヒドを用いてラッカーゼを固定化した。水晶振動子微量天秤法で固定化量を測定したところ、メソポーラスシリカの細孔内の全域に渡って、ラッカーゼが固定化されていることが分かった。固定化したラッカーゼの活性を評価するため、ABTS(2,2'-アジノビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸))の酸化を水溶液中で行ったところ、高い酵素活性を維持することが分かった。一方、有機溶媒中でのジメトキシフェノールの酸化反応を行ったところ、固定化していないラッカーゼが短時間で活性を失うのに対して、メソポーラスシリカに固定化したラッカーゼは、活性を長時間維持することが分かった。以上の結果から、メソポーラスシリカの細孔径や表面性情を改善することで、酵素の固定化量を増大させ、酵素活性を長時間維持することができた。
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