研究課題
本研究では、水中でも強い固体酸性を有する新しい強酸性ナノ構造体触媒を創製することをひとつの目的としている。前年度に引き続き、メソポーラス遷移金属酸化物についてさらなる検討を行った。ニオブとタングステンからなる複合酸化物メソ多孔体はニオブ/タングステン=3/7のときブレンステッド酸強度が最も高く、フリーデルクラフツアルキル化、糖類の加水分解において高い活性を示した。このメソポーラス酸化物において、ポスト処理として焼成温度を変化させることにより、細孔構造の制御および、酸触媒活性の向上に成功した。焼成温度が673Kの場合、平均細孔径は4.8nmであった。焼成温度の上昇に伴い、平均細孔径は大きくなり、873K焼成では9.2nmまでに拡張した。細孔容積、表面積および酸密度は減少したものの、アルキル化においてターンオーバー速度は単調に増加した。また、糖の加水分解反応においても活性の大幅な向上が見られた。もう一つの目的は、バイオマス原料であるセルロースの加水分解等の重要な反応を、固体酸触媒にて高効率に進行させることである。この反応は固固反応であり、別のアプローチにて当該反応を実現することを試みた。基質が固体の場合、ナノ粒子からなる触媒が最適であると考えた。しかし、そのままでは分離回収が困難となってしまうため、磁性材料との複合化を検討した。磁性を有するCoFe2O4ナノ粒子を合成し、これをスルポ基含有シリカで修飾した(CoFe2O4@SiO2-SO3H)。この磁性を有する強酸ナノ触媒は、二糖類のスクロース、セロビオースのみならず、多糖類でかつ固体のセルロースを基質とした場合でも水中にて加水分解が進行し、また触媒が磁石により容易に分離が可能であった。
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