研究概要 |
触媒劣化を抑制することは省エネルギーや金属使用量の削減,資源の有効利用に向けて重要な検討課題である.金属粒子をシリカ層で被覆することにより,金属粒子の焼結(シンタリング)や溶出,脱落等による活性劣化を抑制できる.しかしながら金属粒子がシリカ層で被覆されることにより,大きな分子との反応ではシリカ層への拡散律速となるため高活性が得られにくいなどの問題が挙げられる.そこで本申請課題では,シリカ被覆金属触媒の応用拡大を目指し,活性や耐久性に優れた高機能性シリカ被覆金属触媒の開発及び脱水素反応への展開を行う.本年度の研究では,官能基を含むシリカ層で被覆されたPt触媒を調製し,回分式有機ハイドライド脱水素反応,高温での加熱処理に対する耐久性を評価した. 1.フェニル基やメチル基を含む有機シランを原料に用いて,種々の官能基を有するシリカ層で被覆された炭素担持Pt触媒を調製した.従来のシリカ被覆Pt触媒と同様に数nmのPt粒子が高分散に担持されていた.水への分散試験を行ったところ,官能基を付与したシリカ層が疎水化していることを確認した.また高温での加熱処理を行ったところ各官能基は分解し,そのためシリカ層にマイクロ孔が形成していることがわかった. 2.回分式反応器を用いたシクロヘキサン脱水素反応を行った.従来法の官能基を含まない有機シランを用いたシリカ被覆Pt触媒では活性がわずかであったのに対し,多孔性シリカ被覆Pt触媒では活性が向上した.触媒の耐久性を評価するため高温加熱処理し触媒劣化試験を行った.加熱処理により比較触媒の炭素担持Pt触媒は活性が大きく低下したのに対し,多孔性シリカ被覆Pt触媒では活性の低下が抑えられ,加熱処理後の比較触媒を上回る結果が得られた.シリカ層による被覆によりPt粒子のシンタリングが抑制され,またシリカ層の多孔化によりシクロヘキサンの拡散性の向上が効果的な触媒活性につながったと考えられる.
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