研究概要 |
クラーク数上位の元素であるKおよびFeから構成される複合酸化物系固体塩基物質の合成を検討した。異なる組成および結晶構造を有するK-Fe系複合酸化物を合成し最適化した結果、強塩基性を示す化合物として[KO]^-層と[Fe_<11>O_<16>]^+層からなるKFe_<11>O_<l7>が有望であることを見いだした。さらにFeの一部を2価または3価の金属で置換すると塩基性が向上することがわかった。KFe_<11>O_<l7>およびFeの一部を各種金属で置換して得られたKFe_<11-x>M_xO_<17>(M=Mg, Mn, Co, Cu, Zn, Sn)を用いて、バイオディーゼル燃料製造のモデル反応の一つであるトリアセチンのメタノールによるトランスエステル交換反応を検討した。KFe_<11-x>M_xO_<17>の中でM=Mnにおいて最も高い触媒活性を示した。既存の固体塩基であるCaOと比較した結果、KFe_10MnO_<17>は約2倍高い触媒活性を示した。触媒活性に及ぼす温度依存性(30~60℃)を調べたところ、CaOは室温付近での活性低下が大きいのに対して、KFe_10MnO_<17>は活性低下が少なく低温作動性に優れていることが明らかになった。K-Fe系複合酸化物の反応性に及ぼす金属置換効果を塩基強度および塩基点量に着目して解析を試みた。FeのMnによる一部置換は、塩基強度にはほとんど影響を及ぼさず、塩基点量の飛躍的増加をもたらすことがわかった。K-Fe-Mn系複合酸化物は、エネルギーと資源投入をミニマム化したバイオディーゼル製造用触媒として有望な候補であることを見いだした。
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