前年度最適化したK-Fe-Mn系複合酸化物の高表面積化を目的として、錯体重合法による合成を検討した。錯体重合法で合成したK-Fe-Mn系複合酸化物は、従来法である固相反応法により合成したものに比べて粒子サイズが1/10程度に減少し、高い表面積を示した。また、1次粒子の凝集により生成した2次粒子中にはマクロレベルの細孔が形成されることがわかった。さらなる高表面積化を目指してK-Fe-Mn系複合酸化物のシリカメソ多孔体への固定化を試みたが、鉄酸化物がメソ細孔内に析出したものの、目的のK-Fe-Mn系複合酸化物の固定化には至らなかった。錯体重合法で合成したK-Fe-Mn系複合酸化物を用いて、トリグリセリドの一つであるトリアセチンのエステル交換反応を行った結果、固相反応法合成触媒よりも約1.5倍高い活性を示した。これは既存触媒であるCaOに比べて約4倍高い触媒活性に匹敵した。また、K-Fe-Mn系複合酸化物はClaisen-Schmidt縮合に対しても、従来の固体塩基触媒を比べて高い活性を示し、K-Fe-Mn系複合酸化物の高い塩基性が他の塩基触媒反応に対しても有効であることを実証した。さらに、高表面積化したK-Fe-Mn系複合酸化物を大豆油からのバイオディーゼル燃料製造触媒に適用した結果、K-Fe-Mn系複合酸化物は既存固体塩基触媒であるCaOと比べて約2倍高い活性を示すことがわかった。以上の結果より、錯体重合法により形態制御したK-Fe-Mn系複合酸化物は、エネルギーと資源投入をミニマム化したバイオディーゼル製造用触媒として有望であることがわかった。
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