研究概要 |
唯一、試験管内再構成が可能なシアノバクテリア生物時計由来素子であるナノサイズ時計タンパク質KaiA, KaiB, KaiCを微小空間内に封入し、制御性を高めたナノ・マイクロサイズの人工時計細胞デバイスを生み出すことを目的として本研究を推進している。まず、時計タンパク質を人工膜小胞中に再構成し、時計としての活性を保持しているかの確認を行う前段階として、油中におけるリン脂質被覆ドロップレット中での時計タンパク質の再構成とその活性検出を試みた。その結果、再構成された時計タンパク質は24時間周期ではなく35時間の長周期となっていたが、少なくとも4日間、時計として機能することが確認された。この結果から人工時計細胞デバイス創製の可能性が示された。次に、何が原因となって長周期化が起こっているのかを明らかにするために、時計タンパク質に蛍光標識を行い、膜小胞中での動的変化を明らかにすることを試みた。蛍光標識によるKaiタンパク質のドロップレット内の局在を観察した結果、KaiCがドロップレット膜近辺へ局在していることが確認された。このため、長周期化の原因はKaiCが膜近辺へ局在することで、局所的なKaiCタンパク質濃度が上昇し、Kaiタンパク質の濃度バランスが通常の状態と異なるために引き起こされている可能性が示唆された。これらの成果は生物時計の応用への土台となるだけでなく、より細胞に近い膜小胞中再構成における生物時計の新たな振る舞いを明らかにし、新しい知見をもたらす成果である。
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