研究課題/領域番号 |
22760605
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
兒島 孝明 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (40509080)
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キーワード | 発現制御 / 生体機能利用 / 核酸 / 蛋白質 / 遺伝子 |
研究概要 |
本研究課題では、W/OエマルジョンPCRを利用したビーズディスプレイシステム用い、糸状菌由来の転写因子結合配列の大規模ライブラリースクリーニングを行い、糸状菌転写因子新規結合配列の獲得、改変プロモーターの創製を試み、バイオプロセス改変による有用物質の高効率生産への応用を目指す。 22年度に行った糸状菌Aspergll nidulans由来転写因子AmyRとランダムDNAライブラリーを用いたスクリーニングより得られた各クローンの評価を行った。その結果、AmyRに対し結合活性を示したクローンは強い結合親和性を示す5配列(グループ I)と弱い結合親和性を示す10配列(グループII)に分類された。各グループに対しDNA配列アライメントを行ったところ、グループIにおいて結合モチーフ、(-5'-CGGNNNTTTNTCGG-3')が確認された。このモチーフは、2つのCGGトリプレット間にチミンが高頻度に保存されており、以前の研究において提起されていた新規AmyR結合モチーフと合致していた。グループIIにおいてはAmyRの結合に必須とされるCGGトリプレットモチーフが確認された。これらの結果をまとめてBiosci. Biotechnol. Biochem.に投稿し、掲載許可を得た。 また、A.nidulansゲノムライブラリーを作製し、ビーズディスプレイ法によりA-nidulansゲノムライブラリーをマイクロビーズ上に構築することに成功した。このライブラリーを用いてAmyR結合部位のゲノムマッピングを行う。 さらに、22年度に確立したビーズディスプレイ法を用いたプロモーター活性選別法に関する結果をまとめ、現在論文投稿中である。 今後、上記手法及び得られる知見を組み合わせ、転写因子結合配列のゲノムワイドスクリーニング、バイオプロセス改変による有用物質の高効率生産への応用を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の実験計画ではモデル糸状菌をA. nidulans、モデル転写因子としてAmyRをそれぞれ用いて本系の確立を行った上で種々の転写因子、及び産業利用が期待される糸状菌A. oryzaeバイオプロセス改変を試みる予定であったが、現時点ではまだA. nidulans-AmyRでのみしか検討を行えていない。しかしながら、本研究は順調に推移しており、一層のスピードアップを図れば当初の目的を達成することは不可能ではないと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
・糸状菌A.nidulansゲノムライブラリーを用いた転写因子結合部位の同定 既に構築が完了しているA.nidulansゲノムビーズライブラリーを用いてAmyRの結合DNAのスクリーニングを行う。獲得された配列解析を行い、得られた配列情報を基に用いたAmyRがどの遺伝子制御に関与しているか、特定する。また、AmyR以外の糸状菌転写因子を用いた糸状菌転写因子結合配列の解析を可能な限り行い、網羅的解析に基づいた転写因子-DNA相互作用ネットワークの構築を試みる。 ・無細胞蛋白質合成系を用いた糸状菌転写因子発現条件の検討 本スクリーニング系の問題点として活性型転写因子の発現の難しさが挙げられる。そこで活性化型転写因子の高効率発現及びさらなるハイスループット化を目指すため、無細胞蛋白質合成系によるA.nidulans転写因子の活性型発現条件の最適化を試みる。具体的には、上記AmyRをモデル転写因子として、反応温度、フォールディングを促進する因子の付加などの検討を行う。 ・活性型プロモーターハイスループットスクリーニング法の確立と応用 申請者らによって確立されたプロモーター活性スクリーニング法のさらなる効率化を試みる。具体的には本手法においてレポーターとして用いるリガーゼリボザイムの最適化を行い、プロモーターデザインの基盤技術確立を行う。 ・糸状菌バイオプロセスデザイン 上記の検討より得られた知見、要素技術を基にA.nidulansゲノムに対してAmyRによる発現制御及びデンプン代謝に関与する遺伝子のプロモーター領域の改変を行う。具体的には、可溶性デンプンの分解能の向上を試みる。この一連の手法を確立することにより、転写因子結合部位の網羅的解析に基づいたバイオプロセスデザインが可能となる。さらに、広く産業利用されている糸状菌A. Oryzae0000000000000についても同様の試みを行い、本糸状菌バイオプロセスデザイン法の産業応用への基盤技術確立を目指す。
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