研究概要 |
大腸菌が本来有するATP合成酵素は反転膜から解離しやすいため、解離しにくい好熱菌のATP合成酵素を用いることを考えた。吉田賢右教授(京都産業大)および鈴木俊治先生(東京工業大学、ICORP ATP合成制御プロジェクト)の協力を得て、Thermophilic Bacillus PS3のATP合成酵素を発現させた大腸菌の反転膜小胞を調製し、反転膜小胞内外のプロトン濃度勾配を駆動力としてATPを合成させた。また、デルタロドプシンと好熱菌ATP合成酵素を共発現させた大腸菌の反転膜を調製することで光駆動ATP再生小胞を得た。ルシフェラーゼを用いることで、この小胞の光依存的なATP合成活性を測定することに成功した。また、プロトン濃度勾配に依存しないアデニレートキナーゼ(2ADP→AMP+ATP)活性の阻害剤であるP_1,P_5-di( adenosine-5')pentaphosphateによって阻害することで、この光駆動によるATPの合成が、発現させたATP合成酵素によるものであることを実証した。実際に、この光駆動ATP再生小胞と、ATPをエネルギー源としてグルコースからグルコース6リン酸を合成するヘキソキナーゼを共役させることで、光を用いてグルコース6リン酸を合成させることに成功した。本研究で目指す光駆動バイオプロセスは、光のエネルギーを直接的にATPに変換することで、クリーンでかつ高効率という特色を持ち、社会的に見ても波及効果の大きい技術革新になり得ると考えている。
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