グルタチオンは、抗酸化作用、解毒作用などの機能を持つトリペプチドである。細胞内で酸化型グルタチオンは、Glutathione Reductase (Glr)によって還元型グルタチオンに還元され、通常は、ほとんどが還元型として存在し、還元エネルギーを細胞内に供給している。本研究では、現在還元型として生産されているグルタチオンを、より安定性の高い酸化型として高効率に生産する酵母の創製を目的とした。Saccharomyces cerevisiae YPH499株のGLRにhis3遺伝子を挿入することでGLR破壊株を作製した。また、グルタチオン合成酵素遺伝子GSH1、GSH2およびGlutathione peroxidae (Gpx)遺伝子の過剰発現は、PGK1のプロモーターおよびターミネーターを用いてゲノム組み込みを行った。なお、グルタチオン濃度はHPLCを用いて測定した。GLR破壊株の還元型グルタチオン濃度は親株よりも低下したのに対し、酸化型グルタチオン濃度は増加した。また、ATPのエネルギーを利用するGSH1及びGSH2を過剰発現させたところ、酸化型グルタチオン、還元型グルタチオン濃度はともに増加した。また、Gpx遺伝子を過剰発現させることでも酸化型グルタチオン濃度が増加した。
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