研究概要 |
本研究は、両親媒性蛋白質を用いて蛋白質外殻を持つ粒子を作成し、分子認識能を有する結合蛋白質を酵素反応により表面修飾させることにより、標的分子の認識がトリガーとなり内包薬剤等を徐放するマイクロ粒子の構築を目的としている。糸状菌由来の両親媒性蛋白質であるハイドロフォビン(Hydrophobin, HFB)を外殻の構成物質とする数十~数百nmの粒子を作成する。粒子表面に露出するHFBのN末端もしくはC末端にソルターゼを用いた酵素反応で結合蛋白質を修飾することで、マイクロ粒子表面に分子認識能を付加する。結合蛋白質が標的分子を認識し結合した際に生じる蛋白質の構造変化によりマイクロ粒子の構造に歪みを生じさせ、粒子内部の薬剤分子の徐放制御機能を持たせる。本研究により、標的分子認識による内包薬剤の徐放制御が可能となり、体内の疾患マーカー物質の有無や濃度を判断し疾患マーカー物質が多く存在する疾患部位において薬剤を放出する薬剤治療技術など医学・薬学などの分野において応用可能な基盤技術となる。 平成22年度においては、HFBの大腸菌での組換え生産を確立し、また精製方法についても確立した。また、ソルターゼはグラム陽性病原細菌に広く分布し、C末端領域に共通してLPETG配列をもつ表層蛋白質前駆体と細胞壁のペプチドグリカンのアミノ基とアミド結合を触媒する酵素であるソルターゼについても大腸菌での組換え生産ならびに酵素の精製方法を最適化した。また、ソルターゼの反応条件の最適化を行っている。さらに、HFBの自己組織化によるマイクロ粒子の構築について、マイクロ粒子表面に提示する分子認識ペプチドについて詳細な検討を行った。
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