本研究では、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)をモデル蛋白質とし、その網羅的変異データベースを用いることにより、汎用性・確実性の高い新規蛋白質設計法の確立を目指している。当該年度においては、特に保存度の高いサイトをピックアップして、そのサイトについて、19種類の変異体蛋白質を網羅的に作製し、その活性や安定性、二次構造等の物性解析を行った。それにより、各蛋白質特性パラメータ(活性、安定性、基質あるいは補酵素特異性などに対する変異効果)と配列情報(保存度等)の関係、あるいは各蛋白質特性パラメータとアミノ酸特性(極性、サイズ等)の関係、などに関する知見を蓄積することが出来た。これらは、アミノ酸配列(変異導入部位や置換するアミノ酸の種類)と蛋白質特性パラメータとの対応関係に関する経験則の抽出において、重要な知見であり、今後、研究を進めていくにあたり、意義があると言える。 また、網羅的データベースを直接利用した進化光学的蛋白質設計法の確立を目標として、当該年度は、DHFRの補酵素特異性変換(DHFRが利用する補酵素をNADPHからNADHに変換する)に着目して、補酵素特異性に特徴があるとされるサイトを中心に、DHFRの変異型蛋白質の作製を進めた。今後、これらの変異を実際に組み合わせ、準加算的適応歩行法を用いて、DHFRの特性の向上を試みることにより、変異部位の選択方法や、変異効果の加算性の適用限界に関する課題を克服することで、当初の目標の達成を目指していく。
|