創薬研究で頻繁に用いられる細胞アッセイの効率化に向け、薬剤毒性の濃度依存性試験を簡便に実施できるマイクロ流体デバイスの開発を進めた。具体的には、広範な濃度範囲の段階希釈系列を調製できるマイクロ流路ネットワークを備えた灌流培養マイクロチャンバーアレイチップを設計・加工し、動作試験を行った。段階希釈系列は6桁の濃度範囲に渡って正確に調製できることが確認され、適切な操作条件で操作することで、各マイクロチャンバー内で良好な細胞増殖が確認された。また、マイクロピペットで細胞懸濁液および薬剤溶液を導入し、加圧により送液することのできるインターフェースを備えることでマイクロチップ上で細胞アッセイを簡便に行えることを確認した。以上の結果を踏まえて、モデル細胞(HeLa細胞)とモデル抗癌剤(Paclitaxel)を用いて薬剤毒性の濃度依存性試験を実施した。灌流培養マイクロチャンバーアレイチップを用いて測定された細胞増殖阻害活性(IC_<50>)は、マイクロプレートを用いて測定されたIC_<50>と同程度であり、従来の労働集約的な濃度依存性試験を1枚のマイクロチップを用いて実施可能であることを実証した。以上の成果は灌流培養マイクロチャンバーアレイチップを次世代型細胞アッセイツールとして実現するためのマイルストーンとなるべき成果であり、分析化学の一流紙に掲載されている。さらに、マイクロチップを構成するシリコーン樹脂の厚みや培養液の灌流速度を変化させることで、酸素及び栄養素の物質移動条件が細胞増殖に及ぼす影響について検討を進め、マイクロチャンバーアレイチップの設計や操作条件に関する指針を得た。
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