創薬研究で頻繁に用いられる細胞アッセイの効率化に向け、薬剤毒性の濃度依存性試験を簡便に実施できるマイクロ流体デバイスの開発を進めた。本年度は、酸素と栄養素の供給条件の最適化という観点からマイクロチップの設計指針を得るために、灌流培養時の酸素と栄養素の物質移動計算を行った。また、計算結果に基づいて、マイクロチャンバーを設計し、(8段階の濃度系列)×(5連)で細胞毒性試験を実施できるチップを加工し、動作確認を行った。この灌流培養マイクロチャンバーアレイチップを用いて測定された細胞増殖阻害活性(IC50)は、マイクロプレートを用いて測定されたIC50と同程度であり、従来の労働集約的な濃度依存性試験を1枚のマイクロチップを用いて実施可能であることを実証した。 以上で、当初の計画の研究を完了したが、本研究の成果をさらに発展させ、実用化に向けた方向性を見出すために、集積化細胞毒性試験チップのプロトタイプを試作・加工した。モデルチップとして、(12種類の薬剤)x(8段階の希釈系列)x(4連)=384とおりの細胞アッセイを行うことのできるマイクロプレートサイズの灌流培養マイクロチャンバーアレイチップを設計・加工し、細胞毒性試験を集積化する際の技術的な課題の抽出を行った。このチップを用いて細胞毒性試験のモデル実験を行ったところ、微細な構造のマイクロ流路ネットワークの集積度を上げるにつれ、チップ加工の歩留まりが低下するという問題点が顕在化した。この問題点は集積化細胞毒性試験チップを実用化するために、今後解決すべき課題と考えられる。
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