日欧米において、火星、金星、木星などの外惑星探査が盛んに計画されている。これまで惑星探査(地球帰還も含む)の最終段階で探査機を惑星軌道に捕獲する際には、化学推進を使った減速が行われていた。この減速に膨大な推進剤が必要なため、探査機の設計自由度が制限されている(例えば、2010年打上げのJAXA金星探査機では、総重量の50%を推進剤が占め、測定機器は7%に過ぎない)。そこで、空気抵抗を利用して減速し、化学推進を不要にする「エアロキャプチャー」が提案されているが、技術課題が多く実現していない。本研究では、全く新しい方式の電磁力を用いたエアロキャプチャー技術を提案し、数値解析を用いてその優位性を明確にする。平成22年度の研究では、その第一歩として、エアロキャプチャーを行う高高度の希薄気体領域に宇宙機を突入させた際に、発生しうる電磁力の予測を行うため、Direct Simulation Monte-Carlo (DSMC)コードに、熱化学非平衡モデルを組み込む拡張を行った。このコードを用いて、地球高度80kmにおけるハヤブサ形状カプセルの流れ場を解析したところ、電離度が2%を越え、磁気相互パラメータが100程度であり、エアロキャプチャーに必要な電磁力発生が期待できることがわかった。さらに、ホール効果を無視した(得られる最大の電磁力見積もりに相当)磁場印加シミュレーションを行ったところ、0.2-0.3テスラの磁場を印加した場合に、カプセルにかかる抗力が50%程度増加し、熱流束は40%程度減少することがわかった。以上の結果より、今後ホール効果を含めたより実際に近いシミュレーションを行う上で必要な下地が整い、希薄気体領域においてエアロキャプチャーに十分な電磁力が発生可能なことが示唆できた。
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