研究概要 |
炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を用いた衛星搭載用の大型軽量熱安定鏡の開発を目的とし,CFRP積層板のナノオーダー精度を有する鏡面の創製手法と,同じくCFRP積層板のナノオーダーの長期寸法安定性向上について研究し,結果を踏まえて大型鏡を製作・能力を検証する.これまで, CFRPはその優れた比強度・比剛性から,航空宇宙分野でのさらなる適用が期待されている一方で,解決されていない微視的な経時変形のため,ミラーやアンテナなどの精密な部材への適用は見送られてきた.本研究では,従来「予期せぬ変形」とされていた, CFRPの微視的変形メカニズムを明らかにし,並びにコーディング技術による鏡面精度の改善を達成し, CFRPを用いた衛星搭載用の鏡を開発することを研究の目的とする.22年度は小型のCFRPミラーを製作し,その面精度の長期保持性能を調査した.面精度はZygo干渉計にて測定した.測定結果としては試験体のうち,半数が相対的に精度が高く,もう半数が相対的に精度の低いグループに分かれた.これらのグループの違いは,表面処理の段階で,ゲルコーティングにバフ研磨をするかしないかの違いと一致したため,精度の悪いグループに対しても,表面処理をやりなおした.すなわち現状の処理を除去し,ゲルコーティングの後,パフ研磨を施した.しかし,面の精度は改善されなかった.このことから,面の精度とバフ研磨の関係は必ずしも支配的ではないということがわかった.精度の高いグループのCFRPミラーは納入時に20nmRMSを示し,その後様々な劣悪な環境にて暴露試験を行ったところ,経時劣化によって60nmRMS程度まで悪くなった.しかしこのことにより赤外線を対象とした鏡としては可能性があることがわかった.
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