ガラス製の鏡は密度が比較的高いため,衛星搭載時に大きさが制限されてしまうが,比剛性の高いCFRPを鏡として使用できれば,大幅な軽量化,もしくは鏡を大きくすることができる.しかしCFRPミラーの鏡面精度の長期保持性能,温度変化に対する安定性は研究されていないため,本研究にてこれを調査した. シアネート樹脂を用いたオールCFRPミラーを製作し,その面精度を様々な環境で測定した.納入直後の面精度測定では20nmRMSであり,赤外線のミラーとしては使用できる可能性があることを示唆した.高温・高湿や真空などの様々な環境下にCFRPミラーを暴露し,面精度の変化を測定した.吸湿や,樹脂の縮み等から面精度は劣化していったが,60nmRMSで安定した.CFRP鏡面に樹脂を転写した後,バフ研磨を施したミラー二つは上述の面精度をしめしたが,樹脂転写後バフ研磨を施さなかったミラー二つは,納入直後で80nmRMSで,様々な環境暴露により,200nmRMSに劣化した.昨年度の見解としては,樹脂転写後にバフ研磨を施した方が鏡面精度が高いであろうと結論づけられた. 従来CFRPを鏡として使用する場合に問題となっていた,ファイバープリントスルーの問題をある程度解決することができた.これは薄い樹脂層のコーティングにより解決されると期待していたが,繊維一本一本のプリントスルーは極めて小さくすることに成功したが,繊維の束単位の大規模なプリントスルーが新たに発見できた.この大規模なプリントスルーは,同じく吸湿や,フィジカルエージングなどのマトリクス樹脂の変形と関与しており,解決策としては,フィジカルエージングを可能な限り進めた後に,再度樹脂層のコーティングが有力ではないかという結論が得られた.
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