研究概要 |
近年,次世代の大気突入システムとして,柔軟インフレータブルエアロシェルがその候補の一つとして期待されている.これは,軽量大型のエアロシェルにより,大気突入時の空力加熱を低減する効果が注目されているものであるが,柔軟インフレータブルエアロシェルのもう一つの特徴として,容易に形状を変形できることが挙げられる.この特徴を積極的に利用すれば,内圧を制御することや外部の流れの変化に応じて,その形状を変形させることにより,機体に働く空気力を変化させ,飛行軌道を制御,補正できる可能性がある.そこで,本研究では,実用機に近い形状のインフレータブル構造を有する飛翔体の空力特性を数値解析及び風洞試験により把握し,その形状変形による抗力変調,さらに,揚力発生による飛行軌道制御の効果を定量的に検討し,柔軟エアロシェル大気突入機の更なる可能性及び応用範囲について検討することを目的としている. 本年度は,柔軟エアロシェルの特性を把握するための風洞試験にむけての準備を進めた.予備試験として,低速風洞において,3次元視の手法により柔軟エアロシェルの変形量を3次元的に計測する試験を実施し,その計測システムを構築した.また,本研究で想定している機体形状である鈍頭カプセルに直接インフレータブル構造をとりつけた模型を試作し,超音速風洞試験を実施し,試験方法の確認と予備的な空力データを取得した.それと並行して,軌道計算と機体設計法を組み合わせて柔軟エアロシェルを利用した大気圏飛行システムのシステム検討方法を構築し,そのツールを用いて火星探査ミッションへの応用を具体的に検討し,従来システムの比較検討を行った.今後は,今年度準備を進めた風洞試験をより本格的に実施し,柔軟エアロシェル飛翔体の詳細なデータを取得し,そのデータを用いることにより,実際にミッションに応用した場合の有用性を評価したいと考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定していた風洞試験(共同利用設備)が,設備側の都合により使用できなくなるということがあり,本研究において重要な部分を占める風洞試験の実施が遅れている.ただし,試験の準備は順調に進んでおり,遅れている分は,次年度に実施できる予定である.その代替分としての次年度分の設備使用日程の確保は完了している.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は最終年度であるため,再び共用設備の利用の都合により計画どおり実施できない可能性に備え,代替を含めて,複数の設備を申請するなどで対応している. また,本研究の応用範囲である宇宙探査,宇宙輸送をとりまく状況は,さまざまなミッションが提案されていくなど,日々変化している.そのため,本研究においても,その状況を正確に把握し,実際の応用見据えた上で,タイムリーな研究成果を送出したいと考えている.
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