研究課題/領域番号 |
22760636
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
中島 卓司 広島大学, 大学院・工学研究院, 助教 (40444707)
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キーワード | 風力推進船 / 翼型硬帆 / 空力干渉 / 翼間干渉 / 数値流体力学 / EPP |
研究概要 |
本年度は、ゼロエミッション風力推進船に求められる空力性能向上技術構築のための検討として、昨年度に引き続き複数枚の翼型硬帆列を対象とした数値解析と風洞模型試験を実施した。さらに翼帆による空気力を入力とする所要エネルギ推定プログラム(EPP)を構築し、翼帆列による風力推進性能の評価を実施した。これらの手法により、以下に述べる知見を得た。 1.風洞模型試験:3枚の1/100スケール翼帆模型による風洞試験を実施した。この結果、昨年度2枚翼帆列で示されていた各翼帆迎角の個別設定による空力性能向上法が、翼帆枚数を増加させた場合にも有効であることが示された。特に、斜め向い風および斜め追い風条件では、翼帆枚数増大に伴って揚力が増大する翼帆枚数が増え、翼帆列の揚力の増加率が向上した。また、斜め追い風時については抗力を推力の主成分とする迎角設定について検討し、これまでの迎角設定と比べて推力が向上することを確認した。さらに、そのような抗力主体の迎角設定でも、各翼帆迎角の個別設定により推力が向上することを示した。 2.境界要素法を用いた3次元非粘性流動解析と風力推進性能評価:最大9枚の翼帆列モデルに対して迎角を一様に変化させた解析ならびに迎角を個別に変化させた解析を実施し、実際に想定される帆装枚数において空力特性の検討を加えた。その結果をEPPに入力し、翼帆列による風力推進性能を評価した。 3.有限体積法による3次元乱流流動解析:最大9枚の翼帆列について迎角一様条件での解析を行い、翼枚数の増大に伴う空力特性の変化を調査した。また、追い風条件において抗力を推力の主成分とする翼帆迎角配置での空力解析を行い、翼帆間の空力干渉影響についても検討した。特に完全な追い風時には船尾側翼帆の後流中に含まれることによって抗力を生ずる翼帆も存在した。このため、一部翼帆を縮帆によって間引いた状態の解析も行い、干渉影響低減を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多数の翼帆列の空力干渉影響の解明が進んだこと、迎角個別設定によって翼帆列としての性能向上を示したこと、さらにEPPツールの構築による船体運動への影響評価が実現可能になったことなどから、着実に目的に向けた進展が得られていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、主に以下の項目について検討を加えることで、空気力学的な観点からゼロエミッションを目標とした帆主機従型風力推進船を実現するための船舶帆装技術の提案構築を目指す。 ・翼帆形状の改良による風力推進性能の向上 ・翼帆形状の変化に伴う、翼帆間空力干渉影響の変化の検討 ・風圧力の入力による船体構造への影響の検討 ・洋上の大気境界層影響を考慮した翼帆列空力性能の検討、翼帆列-船体間空力干渉の検討
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