研究概要 |
フレキシブル音響レンズの開発のため、本年度は平面型音響レンズを設計した.まず集束音場の特性を解析した.平面型の音響レンズはソニック(フォノニック)結晶構造によって平面形状であってもレンズ作用を及ぼし焦点を形成することが可能である。解析には時間領域でパルス波形の形状を得る事ができるFDTD法を用いた.音響レンズのフォノニック結晶構造を構成する素材はステンレス円柱で直径は1mmで周囲媒質は水とした.ステンレス円柱は三角格子配列で設置し,設置間隔は1.5mmとした,送信周波数は0.74MHzの点音源である.その結果,焦点距離約16mm,利得8dBの平面状のレンズ設計に成功した.さらに設計した平面型音響レンズの試作機を製作した.レンズを構成する素材,円柱の径,間隔は設計値と同じとして製作した.試作レンズを水槽内に設置して水中の集束音場の測定を行った.実験の際の工夫として点音源を生成するためにスリット穴を開けた吸音板を用いた.その結果,音場の集束が見られ音響レンズとして作用していることを確認した.焦点距離は約17mm,利得は6dBと設計値とほぼ一致した.一方,レンズ性能の重要な要素の一つである分解能に直結する方位方向のビーム幅は設計智では2.7mmであったが,試作機の実測値では4.4mmであり,差異が生まれた.次年度はその際の原因を特定して,設計値と実験値の各パラメータの一致を目指すと同時に,より柔軟な形状のレンズを構成することを行う予定である.
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