これまでに、中性子回折を用いた応力ひずみ測定を岩石材料へ展開するために、茨城県東海村に建設されたJ-PARCの高強度中性子を用いて岩石中のひずみ測定を行っている。中性子回折手法を用いて、岩石材料からひずみ解析可能な中性子回折パターンが取得できるようになり、岩石中の残留ひずみのマッピング測定を行った。その結果、微小な試料ボリュームで岩石試料内部からでもひずみ解析可能な中性子回折パターンを取得することに成功しひずみの異方性が見られた。このことから、これまで金属材料を主な対象としていた中性子回折法を用いたひずみ測定を岩石材料に展開し、中性子の高い透過能を生かして岩石試料内部からのひずみ情報を得ることができるようになっている。 今年度は、一軸圧縮試験を行いながらその場中性子回折ひずみ測定が行えるように、岩石圧縮装置の設計・開発を行った。圧縮装置は、中性子入射ビーム、回折ビームが照射されないような構造に設計した。種々の岩石コア試料を用い、一軸圧縮試験を行いながらのその場中性子ひずみ測定を行った。ひずみ量は、ひずみゲージからも求めている。中性子回折およびひずみゲージ、両者から求まるひずみ量には差違が見られ、岩種によっても異なるひずみ発生挙動を示した。これは、岩石材料に含まれる空隙の変形量が大きいのと、粒子の流動などのために、中性子回折から求まる結晶中に蓄積するひずみ量に比べて岩石全体のバルクのひずみ量が大きくなるためと考えられる。 これまでの研究により、中性子回折法を用いた岩石材料中のひずみ測定がJ-PARCで可能になった。岩石中の残留ひずみからは、地下の応力状態を見積もるのに有益な情報が得られると期待され、岩石の圧縮試験からは、岩石の力学挙動やき裂発生・進展および破壊発生挙動の解明に繋がる情報が得られると期待される。
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