今年度の研究では、主に試薬から合成したいくつかのハイドロタルサイト様化合物(以下、HTと表記)を用いて、シュウ酸イオン、酢酸イオン、マロン酸イオン、ナフトエ酸イオン、テレフタル酸イオン、安息香酸イオン、ドデシル硫酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオンの捕捉特性について、有機陰イオンの吸着等温線の形で数多くの実験データの蓄積を行った。アルミ再生工程で生じる廃棄物から合成したHTを用いた有機陰イオンの捕捉試験もスポット的に行い、試薬由来HTが有する捕捉特性とほとんど差がないことを確認した。HT層間への有機陰イオンの捕捉量におよぼすイオンサイズ、イオンの価数、共存イオン種、繰り返し操作の回数、pH、取り込み方法(共沈法、陰イオン交換法および再水和法)の影響を詳細に調べて、有機陰イオンの捕捉量が大きくなる条件を明らかにした。HTを用いた有機陰イオンのイオン交換操作の条件を制御することによって、HTの構造を大きく劣化させることなく可逆的に有機陰イオンをイオン交換できることがわかった。併せて、有機陰イオンの吸着操作前後でのHTの構造変化に着目し、有機陰イオンの取り込み量と層間隙の変化との関係を調べ、取り込み挙動に関する考察を行った。一連の研究結果から、HTが有する有機陰イオンの捕捉特性について工学的に利用できる極めて有用なデータが得られた。さらには、有害有機物を除去するような排水処理剤としての利用を考える上で基礎的な知見が得られたと考えている。
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