大型ヘリカル装置(LHD)に代表される複雑な幾何構造を有した3次元磁場閉じ込めプラズマにおける乱流輸送に対して、定量的な理解を深めることが本課題の目的である。最終年度である25年度では、課題実施期間の初頭に代表者が開発したGKV-Xコードを用いたジャイロ運動論的シミュレーションによる輸送解析を中心に、下記の成果を得た。 (1)これまでに実施した乱流シミュレーションの計算条件(温度・密度勾配長、磁気シア、磁場配位等)をさらに広範囲に拡げ、主にイオン温度勾配(ITG)駆動の乱流輸送シミュレーションを実行した。その結果得られた乱流揺動ポテンシャル及びゾーナルフロー(ZF)振幅とイオン熱輸送係数との簡潔な関係性をより確度の高い形で得た。 (2)昨年度までに、乱流揺動ポテンシャルとZF振幅がそれぞれ、ITG線形不安定性成長率とZFポテンシャルの線形応答関数から得られるZF減衰時間によって表現し得ることが分かっていた。25年度は、より多くの非線形乱流シミュレーション結果に基づいて、その関係式をより正確な形に修正した上で、上記での乱流揺動ポテンシャル及びZF振幅を熱輸送係数との相関関係に基づき、非線形結果をより高い確度で再現できるITG乱流輸送の簡約モデル構築を行った。 (3)上記の輸送モデルを統合輸送コードTASK3Dへの適用し、実際のLHD放電ショットに対する解析を行った。構築した簡約輸送モデルにより、実験結果に近い温度分布を再現することが出来た。 (4)これまでのGKVーXコードでは、モデル化された衝突効果が導入されていたが、複数粒子種での各物理量保存則を満たすようなジャイロ運動論的衝突項の導入を進めた。
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