研究課題/領域番号 |
22760670
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
小林 悟 岩手大学, 工学部, 助教 (30396410)
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キーワード | 照射脆化 / 磁性 / 非破壊検査 / 劣化予測 |
研究概要 |
本研究の目的は、米国カリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)の協力の下、米国アイダホ材料試験炉で高照射量中性子照射した照射試験片、及び、熱時効試験片の磁気計測を行うことにより、高中性子照射量領域における原子炉圧力容器鋼の照射脆化と磁性の相関データベースの拡充、磁性変化のメカニズム解明、更には磁性変化に基づく脆化量予測式の構築を行うことである。平成23年度は、照射脆化のキー元素(Cu・Mn・Ni)の含有量を系統的に変えた原子炉圧力容器鋼(14種)、及び、鉄基三元系モデル合金(2揮)の熱時効実験を実施した。 原子炉運転温度での磁気特性の応力緩和効果の基礎データ蓄積のため、H22年度から継続している原子炉圧力容器鋼材(照射脆化のキー元素のCu, Ni含有量を変えた11種)の他、米国UCSBより供与された、初期転位密度が低い原子炉圧力容器鋼(3種)、及び、鉄基三元合金(2種)を新たに加え、290℃、及び、500℃で長時間熱時効実験を開始した。Cu含有量を多く含む原子炉圧力容器鋼、及び、鉄基三元合金において、熱時効時間1000時間以降で硬度の増加が観測された。一方、磁気特性の保磁力は、500℃熱時効材にのみ熱時効に伴う顕著な減少が観測された。この結果は、応力緩和による磁気特性変化は基地組織に強く依存することを示唆している。高照射量領域での応力緩和の影響の詳細を明らかにするため、熱時効実験を現在継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
高中性子照射量領域における磁気特性変化を明らかにするためには、実際の中性子照射材の磁気計測、及び、原子炉運転温度(290℃)での熱脆化の影響を明らかにするための熱時効材の磁気計測が必要である。 前者については、米国カリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)の協力の下、米国アイダホ材料試験炉(ATR)で中性子照射した試験片測定のための準備を進めてきた。しかし、照射開始時期の遅延、照射試料からの放出放射線量低減のための保管措置、磁気計測の実施施設の変更(UCSB→ATR)に伴う施設使用料の発生等の理由により本研究計画での実施が極めて困難になった。
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今後の研究の推進方策 |
24年度は、熱脆化の磁気特性変化への影響の詳細を更に詳しく調べるため、熱時効実験に重点を移す。 また、測定照射試料数は少ないが、本研究課題の情報交流相手先であるハンガリー原子力研究所との共同研究を通し、欧米型及びロシア型原子炉圧力容器鋼において、高照射量領域で機械特性(DBTT,降伏応力)の付加的増加に寄与する "Late-blooming phase"を示唆する保磁力の増加が新たに最近見出された。長い時間高温(290℃)に曝される高照射量領域の磁気特性を理解する上で、熱脆化の影響は当然考慮しなければならないため、同研究所との情報交換を深め、継続中の熱時効実験結果を踏まえた磁気特性変化のメカニズム解明を遂行する。
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