使用済燃料の再処理技術として現在PUREXによる湿式再処理法とともに高温溶融塩に代表される乾式再処理法が検討されている。本研究では、高温溶融塩に代わる媒体「無機イオン液体」を用いてまず(1)ウランイオンの酸化還元反応の素過程について調査し、ウラニルイオンがどのような化学反応を経て酸化ウランとして沈澱するかを解明する。その後、(2)使用済燃料の再処理過程を模擬した溶液条件で、電解還元によってウランを高効率で分離回収する電解システムを構築する。昨年度は、無機イオン液体を用いた実験を行う前に塩化ウラン化合物の合成(UCl_4)を行った。種々のウラン酸化物(U_3O_8、UO_2)を出発物質として用いて塩化剤(CCl_4、Cl_2、HCl等)と反応させる際の合成条件と生成物の組成、構造、不純物濃度、安定性を明らかにすることにより、目的とする高純度ハロゲン化物、オキシハロゲン化物等を合成する知見を得た。U_30_8とCCl_4を用いて、(1)式の反応によるUCl_4の合成を行った。 U_3O_8+3CCl_4→3UCl_4+3CO_2+O_2 (1) 実験には石英製反応管を使用し、反応後の生成物について、XRDによる相解析や、TG-DTAによる評価を行った。U_3O_8は黒色であるが、反応温度が400℃付近になると深緑色に変るとともに、反応管出口付近には高級塩化物(UCl_5およびUCl_6)と思われる茶色の析出物が見られ、塩化が進行していることが分った。UCl_4は極めて吸湿性が強く、塩化反応後は、反応管ごと高純度Ar雰囲気のグローブボックス内に移動し、UCl_4を取り扱った。UCl_4試料をXRD測定した結果は、報告値とよく一致しており、単相のUCl_4を合成できたことが分る。従って、CCl_4とU_3O_8との反応により、合成できることが分かった。
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