研究概要 |
放射性廃棄物の地層処分では環境中への放射性核種の漏えいした場合のそれらり移行挙動予測が懸案事項となっている。Mn酸化物は重元素を強く吸着及び酸化することから、環境中での放射性核種の移行遅延効果があると期待される。特に、環境中に産出するMn酸化物はその多くが微生物起源であると考えられていることから、微生物が形成するMn酸化物への放射性核種の吸着挙動を調べる必要があった。本研究ではMn(II)酸化細菌であるPseudomonas sp.NGY-1株及びMn(II)酸化真菌Acremonium sp.KR21-2株を用いて研究を進めた。今年度はこれらMn酸化菌により形成させたMn酸化物へのアクチノイド(Th(IV),Np(V),U(VI))吸着実験を行った。その結果、微生物に形成させたMn酸化物は人工的に合成したものとは異なるアクチノイド吸着挙動を示した。人工合成Mn酸化物を用いた実験では、すべてのアクチノイドが強く吸着し水溶液中から除去されるのに対して、Np(V)は生物性Mn酸化物へ殆ど吸着しないことが明らかとなった。さらに、Th(IV)は生物性Mn酸化物に一旦吸着するものの時間とともに次第に脱着してくこともわかった。これは、i)人工合成と生物性Mn酸化物の構造の違いによるもの、及びii)微生物から排出された有機配位子の影響によるものの二つのファクターが関与しているものと考えられる。特に、Th(IV)はMn酸化物上に一旦吸着した後、微生物由来の有機配位子と強く結合することにより溶液中で安定化し次第に脱着していくものと解釈できる。本研究の成果からこれまであまり指摘されてこなかった生物性と人工合成Mn酸化物の吸着挙動の違いの重要性が明らかとなった。
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