研究概要 |
フェナントロリンアミドモノマー(PTAモノマー)はその分子骨格中にフェナントトロリンアミドとラジカル重合性が高い炭素-炭素二重結合を併せ持つ新規な化合物である。PTAはランタノイドやアクチノイドイオンの分離能が高いのみならず、高い酸濃度領域でもアクチノイドと選択的に錯形成を起こすことが報告されている。そのためPTAモノマーの開発は、本研究を遂行する上で最も重要な課題として位置付けられる。平成23年度は、PTAモノマーの合成方法の確立と、そのモノマーによるイオン認識特性、ラジカル重合性能の検討を行った。具体的には、平成22年度迄に既に合成方法が確立されている1,10-phenanthroline-2-carboxylicacidを出発物質として、2種類のPTAモノマーを合成することに成功した。ひとつは(a)N-octyl-N-tolyl-1,10-phenan-throline-2-carboxaideのオクチル基末端をアクリルアミド化したモノマー、もう一つは(b)N-Methyl-N-phenyl-1,10-phenanthroline-2-carboxamideのフェニル基(パラ位)に炭素-炭素二重結合を導入したモノマーである。この2つのモノマーについて、種々のランタノイドイオンに対する吸着特性を検討したところ、これまで報告されているPTAと類似した挙動を示すことが明らかになり、期待した結果を得ることができた。さらに、このモノマーをフリーラジカル重合することに成功したが、(b)のモノマーを用いて合成されたポリマーは、各種溶媒への溶解性が低くなることがわかった。現在、(a)のモノマーを用いたブロック共重合体の合成を進めており、このブロック共重合体によるナノ配位空間の設計を進めている。
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