中性子スピン干渉計は物質中の磁場分布や空間磁場を精度よく観測することができる。更に、電流の作る磁場分布を観測することにより、非破壊で電流密度の観測も可能となる。ラジオグラフィ法に導入することにより磁場分布や電流密度分布の2次元および3次元的可視化を可能とする。応用例として、例えば燃料電池の発電時の電流密度分布の可視化に繋がることが期待される。しかしそのためには中性子スピン干渉計の磁場に対する感度を向上させることが必要であった。中性子スピン干渉計の磁場に対する感度は中性子の波長分解能に依存しているため波長分解能を向上させることが求められた。定常中性子源において波長分解能の向上は中性子強度の減衰に繋がるため、感度向上には限界がある。一方パルス中性子においては、飛行時間法によって波長分解能を向上させることが可能である。 本研究では、中性子スピン干渉計をパルス中性子に適応させ、燃料電池内の生成水と電流密度分布との相関を研究することを目的としている。本年度は、昨年度パルス中性子源への導入に成功した中性子スピン干渉計によって電流密度分布と生成水の可視化を目的とした。燃料電池を模擬した試料において電流密度分布の測定を行い、電流密度分布の可視化に成功した。
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