研究概要 |
本研究では,加速器を用いたがん治療、長寿命核種の核変換処理技術、半導体ソフトエラーの評価・解明等に代表されるような放射線高度利用のための基礎データとなる中高エネルギー陽子による核反応から生成する中性子、軽イオン等全ての放出粒子を測定するシステムの開発と系統的な測定を行い、放出エネルギーと角度ごとの包括的な核データを取得し、理論計算と比較し、既存の物理モデルやパラメータについて改良・改善を行う事を目的としている。 初年度では、NE213有機液体シンチレータを用いた中性子・γ線計測システムと、厚さが異なる3種類のSi半導体検出器(23μm厚、150μm厚、500μm厚)とAPD読み出しのLYSOシンチレータ(2cm厚)から構成される荷電粒子測定用のカウンタテレスコープシステムの開発とそのエネルギー分解能、粒子弁別性能について試験を行った。 実験はTIARAサイクロトロン施設のHB1コースで行った。^<20>Neビーム(260MeV)を、薄いベリリウム,グラファイト及び鉄ターゲットに照射して、生成された中性子、γ線、荷電粒子のエネルギースペクトルを測定し、本システムが中性子、γ線、荷電粒子(水素[Z=1]からアルゴン[Z=13])までの多くの生成粒子に対して十分なエネルギー分解能、粒子弁別性能を持つことを確認した。今後、得られた包括的な断面積結果と理論計算との比較を進める。 また、中性子・γ線測定に関しては、BNCTやPET薬剤生成用小型加速器の遮蔽設計やクリアランス評価のための基礎データとして重要な18MeV陽子入射におけるベリリウム、窒素、^<18>O-水、水、炭素、アルミニウム、銅、タンタル、鉛からの中性子・γ線のエネルギー及び0°から150°までの系統的な角度分布データ(TTY)の測定を行い、評価済み核データ(LA150)や理論計算(MCNPX, PHITS)との比較を行った。
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