本研究では、地域におけるエネルギー・温暖化対策を総合評価する数理モデルを開発する。対象地域から抽出したエネルギーデータベースに基づき開発した数理モデルを用いて、地域の温暖化対策のシナリオを定量的に提示することを目的とする。 対象地域は2009年3月に県内の二酸化炭素排出量を2050年にゼロと提示した山梨県である。今年度は都道府県別エネルギー消費統計が2010年まで公開されたことから、最適化型のエネルギー技術評価モデルのデータベースを更新した。二酸化炭素排出量の削減シナリオと原子力発電の設備容量シナリオを組み合わせて最適化計算を行った。その結果、2050年までの化石燃料と再生可能エネルギーの構成比率を定量的に示すことができた。 また、地域産業連関モデルを開発し、山梨県の32部門における1990年と2005年の二酸化炭素誘発量を算出し、部門別生産誘発額と部門別二酸化炭素誘発量の時系列変化を明らかにした。さらに、1990年から2010年までの県内総生産、人口、生産指数、輸送指数と部門別最終エネルギー消費量の相関分析に基づくシミュレーションモデルを開発し、2050年までの社会シナリオの変化による部門別エネルギー需要の変動を推計した。 山梨県は、2050年頃までに県内で必要な電力を100%県内で賄う「エネルギーの地産地消」を公表した。今後、本研究で開発した数理モデルの改良を継続し、地域におけるエネルギー・温暖化対策の合意形成に向けた政策提言のツールとして活用する計画である。
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