申請者は、新規父性発現インプリンティング遺伝子Peg 10(Paternally Expressed Gene 10)が哺乳類で高度に保存されているレトロトランスポゾン由来の遺伝子であり、哺乳類に特異的臓器である胎盤の形成に必須な機能を持っていることを明らかにしている。これは、レトロトランスポゾンが哺乳類の進化の過程で、哺乳類の生存に必須な機能を獲得したことを実証した初めての報告である。この結果から、申請者は、レトロトランスポゾンを獲得遺伝子として利用することによって、哺乳類特異的機能である胎生を獲得したという仮説「レトロトランスポゾン獲得による哺乳類の胎生進化」を提唱している。本研究では、Peg10 KOマウスを用いて、レトロトランスポゾンであったPeg10が、どのように胎盤形成に関与しているかを解明することで、哺乳類の胎生進化を解明することを目的としている。Peg10の機能解析を行うために、レンチウィルスを用いて、Peg10を胎盤特異的に発現させることで、Peg10 KOマウスの致死性をレスキューする実験を行った。その結果、通常ならば、既に致死となっている受精後12.5日目胚においても胎盤形成不全がレスキューされ、生存していた。よって、この系を用いて、Peg10タンパクの重要な機能ドメインを決定することができる。
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