研究課題
本研究では染色体テリトリー内のクロマチンヒストンの修飾や核内におけるクロマチンのループ構造と遺伝子の転写調節の関わりを統合的に理解するために哺乳類の不活性X染色体上で不活性化を免れる遺伝子をモデルにクロマチンレベル、核構造レベルでの転写制御を解析した。ほ乳類では雌(XX)雄(XY)間の性染色体の遺伝子量を補正するために雌で2本あるX染色体の一方を不活性化する。この不活性X染色体の核内局在を三次元FISH法により解析した結果、不活性X染色体が核膜近傍の外周部に局在する一方、不活性化を免れる遺伝子領域は不活性Xのテリトリーの外側に局在することが分かった。これらのクロマチン領域の局在変化には染色体を核マトリクス(核内骨格)に固定する領域Matrix attachment region (MAR)が重要である考え、不活性化を免れる遺伝子の1つEIF2S3とその近傍で不活性化を受ける遺伝子間の領域のMARを探索したところ、EIF2S3の1kb、14Kb、16Kb上流付近に3つのMAR候補配列が検出された。このMAR候補領域のヒストン修飾を調べた結果、1kb上流のMAR領域ではH3K9、K27、およびH4K20のメチル化レベルが急激に変化していた。この結果は、不活性化を免れる遺伝子が不活性クロマチンのテリトリーからループアウトし、転写を維持するためには近傍のMAR配列周辺のクロマチン構造が変化し、核マトリクスにMARが固定される必要性を示唆している。
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Journal of Toxicology and Environmental Health, Part A
巻: (in press)
Toxicology in Vitro
巻: 25 ページ: 623-629