動物のつくる構造物が、変動する環境や状況の下でその機能を十分に発揮するためには、構造と機能の間にフィードバックによる調節機構が働いているはずである。ケラの音声コミュニケーションに使われる巣穴(鳴き穴)の構造には、鳴き音を増幅させる効果があるとされる。この巣穴構造と音響増幅機能の間に、フィードバックによる調節機構がどのように働いているのか、情報の認知と行動の関連性から明らかにすることは、構造物の機能の進化を考える上で非常に重要なアプローチである。本年度は実験方法や音響解析手法の検討を行い、録音システムを確立し、実験体制を整えた。巣穴の増幅機能を実証するためには、巣穴内外での音声の比較をすることが重要であるが、小型マイクや小型スピーカーにより、巣穴内での音声の録音、再生という技術的にクリアすべき問題を解決したことは大きな成果である。また、音圧の測定装置を導入し、その解析方法の検討を行った。これにより、繁殖期にむけて実験をすみやかに開始できる準備が整った。
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