研究課題/領域番号 |
22770021
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
三村 真紀子 九州大学, 大学院・理学研究院, 特任助教 (60451689)
|
キーワード | 分布域末端 / 種間交雑 / 浸透交雑 / コアレセンス / キイチゴ / 気候変動 |
研究概要 |
異所的種分化によって異なる環境に適応した2種が、気候変動によってその分布域を変化させるとき、分布域の末端では、隔離、2次接触、局所的選択圧の変化など、様々な進化学的なダイナミクスを経験する。本年度は、気候変動に対する分布域の変化とその結果おこりうる現象を明らかにするために、.12機能遺伝子の配列解析を行った。この結果、対象種の一種モミジイチゴの南端に位置する屋久島集団は、およそ11万年前に九州の集団と分岐したのに対し、屋久島に北限集団をもつリュウキュウイチゴは、少なくとも今からおよそ1.2万年前に屋久島に到達したことがわかった。モミジイチゴは最終氷期(2万年前)以前から南限集団を維持したいたのに対し、リュウキュウイチゴは最近になって分布を北上させてきたことが示唆された。一方、これら2種間の分岐はおおよそ100万年前と推定され、分布の交わる末端でのみ、種間で有為な遺伝子流動が観察された。上現在分布の重なっていない集団間からは交雑は観察されなかったため、分布域末端で最近起こった交雑を反映していると考えられる。つまり、気候変動に対する応答速度は種によって異なり、結果これまで接触していなかった種が、分布域末端で交わり交雑を開始しうることが明らかになった。との成果は学会で発表し、論文は現在査読中である。また、こうして起こる交雑が2種のニッチ進化におよぼす効果を明らかにするために、2つの交雑帯を対象とし、低地(リュウギュウイチゴ)から高地(モミジイチゴ)の8集団を対象とし、同様に機能遺伝子の解析を行った。さらに、交雑帯から株分けした9集団についてほ場実験を開始し、クローン個体の形質解析を開始している。現在までのところ低・中標高で展葉やシュートの発達が早い傾向がみられた。来年度はこれらの結果を解析し、まとめる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ほ揚実験に使用するサンプルの苗の発達が遅く、株分けできなかった個体があるため、形質データが十分数得られなかった。しかし、今年度初期の球長はよく、平行する遺伝解析との相関解析に足るデータがえられると期待できる。また、栽培方法の改善と交配実験のために、キチイゴ育種で実績のある官崎大学國武久登教授とその研究室に協力を要請した。遺伝子解析に関しては、広範囲の集団動態パターンを解析・執筆・投稿を完了し、交雑帯に対象をしぼった解析も完了している。
|
今後の研究の推進方策 |
機能的遺伝子の解析は順調に進んでいるが、現在のサンガー法で解析できる遺伝子数に限界がある。形質からだけでは計測できない適応関連遺伝子を追跡するためには、より多くの遺伝子の解析が重要になってくる。近年の技術の発達とともに比較的小さいゲノムサイズをもつキイチゴ(250Mbp)忙おいて、全ゲノム解析によるリシーケンスた現実的になってきた。そこで、今年度はIllumina HighSeq2000を利用レた全ゲノムde novoアッセンブルをめざし、昨年度ペアエンドDNAライブラリの作成を追加で行った。
|